ケーススタディ

2016.04.29更新

 今回ご紹介するのは、原状回復費用を相殺したとして敷金返還を拒否する貸主に対し、敷金返還請求訴訟を提起し、請求額の全額が認められた事例です。

 

【相談前】
 ビルの1フロアを賃借し会社を経営してきましたが、会社の営業を停止することになりました。


 敷金としては賃料の4か月分120万円を差し入れてきましたが、貸主からは原状回復費用として100万円を支出したとして、20万円の支払いをするとの提示を受けました。20年ほど借りていたので壁や床には汚れが目立ちますが、単に会社の事務所として使用してきましたので、それほど建物が傷むようなことはなかったと思います。


 このまま貸主の提示に応じなければならないのでしょうか。

 

【相談後】
 貸主から提示された現状回復費用の見積書を確認しましたが、特段借主が負担しなければならないようなものはなく、しかも、個々の修繕費用は高額と言えるものでした。


 そこで、貸主に対しては、内容証明郵便にて敷金全額の返還を求めましたが、貸主は支払いに応じなかったため、敷金返還請求訴訟を提起しました。

 被告である貸主からは、一応原状回復費用についての反論はなされましたが、裁判官からは借主が負担するような費用はないのではないかとの心証が開示されました。
 

 和解協議の結果、当方請求額の元金をそのまま支払うとの内容で和解が成立しました。

 

【原状回復費用の考え方について】 

 賃貸物件を退去した際、賃貸借契約時に支払った敷金がほとんど戻ってこない場合、場合によっては追加で原状回復費用を請求される場合があります。

 

 建物賃貸借契約では、賃貸借契約終了後には、賃借人はその物件を「原状回復」して明け渡さなければならないと規定されていることが通例だと思います。
 この原状回復のための費用として貸主・借主間に争いが生じることがありますが、通常使用による建物の損耗を回復する費用については借主は支払う必要がないというのが裁判所の考え方です。借主が負担しなければならないのは、賃借人の故意・過失による建物の劣化になります。

 

 貸主から原状回復費用の支払い、敷金との相殺を主張される場合には、修繕工事の見積書が提示されることが多いと思います。
 借主としては、その項目が原状回復費用として妥当なのかどうかを確認することはもちろんですが、実際にその工事が行われているのかを確認することも重要です(実際には工事が行われていない、見積書よりも安く行われていることも珍しくありません。)。

 

 貸主から原状回復費用を請求されているが、その請求が妥当なのかという点で判断がつかないような場合にはお気軽にご相談いただければと思います。

 

 

投稿者: 大西法律事務所

2016.04.12更新

ここで紹介するのは、飲食店での超過勤務について、残業代、時間外手当が認められた事例です。

 

【相談前】

 飲食店で調理の仕事をしていましたが、最近退職しました。

 

 その飲食店ではランチ営業から閉店までおよそ12時間を超える勤務が続いていましたが、売り上げに応じた手当以外に残業代、時間外手当が支払われることはありませんでした。

 

 退職の際、店長に残業代について尋ねたところ、契約書に定めたとおりの勤務時間で勤務していたのだから、残業代は発生しないと言われました。

 

 確かに、会社との雇用契約書には勤務時間、基本給が明記されており、勤務時間もほぼ契約書に定められたとおりだったのですが、このような場合は残業代は支払われないのでしょうか。

 

【相談後】
 法定労働時間は原則1日8時間、かつ、週40時間以内と定められており、それを超える勤務をした場合には残業代、時間外手当が発生します。

 

 受任後、会社に対し、タイムカードの提出を求めました。会社は比較的素直にタイムカードの提出に応じたため、その内容に基づき時間外手当を計算したところ、直近の2年間(賃金の時効は2年です。)で1年分の基本給を超える時間外手当が生じていることが判明しました。

 

 会社に対して、未払分の時間外手当を請求しましたが、それに応じなかったため、訴訟提起を行いました。

 

 会社側は売り上げに応じた手当は時間外手当である旨主張しました。この点については、その手当は売り上げに応じて増減すること、店長の裁量によって決められるものであることから、会社側の主張は認められませんでした。

 

 当方の請求をほぼ認容する判決がなされ、会社側は控訴したものの、控訴審では第一審判決が認めた金額を支払うとの内容で和解が成立しました。

 

 飲食店では比較的法定労働時間を超える勤務が常態化していることが多いと思います。この会社では裁判になるまで時間外手当を支払ったことがなかったそうです。

 

 今回のケースは、会社側がタイムカードの提示に応じたため、勤務時間の立証は比較的容易でしたが、タイムカードがない場合でも飲食店の場合は店舗の営業時間によって立証は可能ですし、事務職のような場合でも電話やメール等をした時間を明らかにすることによって立証することは可能です。

 

 時間外手当が支払われていない場合、ご自身の勤務について時間外手当が支払われるべきなのかどうかについて疑問点等がある場合にには、お気軽にお問い合わせをしていただければと思います。

投稿者: 大西法律事務所

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